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24の瞳。 [読書。]

NHKのクローズアップ現代の中で、
木下恵介監督の特集をしていました。


木下惠介生誕100年 「二十四の瞳」 [DVD]

木下惠介生誕100年 「二十四の瞳」 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • メディア: DVD



黒澤明監督と同時代の方で、
戦中〜戦後〜高度経済成長期には、
黒澤監督をしのぐほどの、人気があったと、知りました。
黒澤監督が、早くに世界で認められていたので、
影に隠れていた印象でしたが、
生誕100周年を機に、今、改めて、
見直されているとのことです。


二十四の瞳 (新潮文庫)

二十四の瞳 (新潮文庫)

  • 作者: 壺井 栄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 文庫



『24の瞳』映画の方は、残念ながら
まだ見ていないのですが、
壷井栄さんの、本は、読み返しました。
学生の頃に、読んだ気がしていたのですが、
当時と今とでは、作品の捉え方がまるで、違いました。

『24の瞳』
主人公の、大石先生と、岬の村の小さな分校の1年生との
交流を描いた物語です。
戦争という大きな流れに、否が応でも巻き込まれていく、
大石先生と、かつての教え子たち。

物語終盤の舞台は戦後。
大石先生は、3人のお子さんのお母さんになり、
母と幼い娘を失い、オットが戦死。
40代で再び、岬分校の先生として職場復帰を果たし、
かつての1年生岬組のみんなと、同窓会をするところで、
物語はおしまいとなります。

戦後に、書かれた物語ですが、改めて読み返してみると、
坪井さんの反戦への思いを綴った物語だったのですね。
『靖国の妻』となる事を、悔しく思った大石先生。
『靖国の母』には、なりたくないと、息子をなじった大石先生。

戦中は、大石先生のようなモノの考え方は、
非常に危険な思想だと思われていたのでしょうが。
戦中であっても、大石先生のように、
感覚が麻痺していない(洗脳されていない)人がいたことに、
ほっとさせられるような、驚くような気持ちがします。
おかしな事を、おかしいと言う事すらできない、
不自由な時代だったようですから。。。

過剰なまでのナショナリズム、情報操作、洗脳、貧困。。。
その中で生きていかなくてはならない人、命を落としていく人。
世界の決して少なくない数の国では、
今もたくさんの、大石先生や岬の生徒たちがいるんだと思うと、
胸が痛みますね。



壷井栄さんは、思慮深い大石先生というキャラクターの瞳を通して、
昭和初期の現実社会を、ぐいぐいと、描いています。
淡々と綴られたリアリティが、私たちの心をぐっと、
とらえて話さないのかもしれないなと、改めて考えさせられました。
木下監督も、きっと、そんなリアルを、
映像化したかったのではないでしょうか。
映画も是非、見てみたいです。

<その後の追記です>
木下監督の、映画『24の瞳』を、ようやく借りました。
映画は、小説の繊細さを見事に、表現しています。
頭の中で思い描いていた風景が、そのまま、広がります。

大石先生役の高峰秀子さんが、とても美しく、
子供たちの唱歌が、爽やかでした。
貧しい人々の様子、戦争に巻き込まれていく人々、戦後のやるせなさが、
しみじみと伝わり、考えさせられます。
まめ太も、夢中になってみていましたが、
よい、体験が出来たと思います。




木下惠介生誕100年 「陸軍」 [DVD]

木下惠介生誕100年 「陸軍」 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • メディア: DVD


↑この映画、まだ見た事ないのですが、
ちょっと、紹介していた映像を見ただけで、号泣してしまいました。

出征する息子の姿を走りよって、いつまでもいつまでも見守る、
母の映像が、ラストシーンだそうです。

このお母さんのような人は、当時、たくさんいた事でしょう。
そして、大石先生も、息子が出征していたとしたら、
きっと、このお母さんの様であっただろうと、考えさせられました。


戦争が日常であった世の中が、いかに辛い事か。
今の平和が、とてもありがたい事に思えてきます。




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コメント 5

mykaira

ご無沙汰しております。
新年のご挨拶が遅れまして申し訳ございませんでした。。。
今年も健康一番、幸せな一年でありますように・・。
今年もよろしくお願いします。
ゆっくりなペースですが・・・ブログも続けられるといいな~と思っています。本を読む時間ももてるように、今年はゆっくりと過ごせればいいのですが・・。
by mykaira (2013-01-26 19:22) 

タッチおじさん

ご訪問有り難うございます
宜しく<m(__)m>い致します。
by タッチおじさん (2013-01-27 16:18) 

きよたん

木下恵介監督と女優の高峰秀子はご夫婦で
とっても素敵なカップルでしたね
平和が大切である事を映画を通じて教えてもらえますね
貴重な監督さんです
世界のどこかで戦争が行われ小さな子どもたちも犠牲に
なっています。平和を守らないといけませんよね
by きよたん (2013-01-27 22:31) 

ツキヒメ

小説では読んだことはありますが、でも、たしか小学生か
中学生だった頃なので、きっと今読み直してみると
感じ方が全然違うでしょうね。
強い母に、私はなれるかなあ・・・
by ツキヒメ (2013-02-03 19:41) 

qooo

>mykairaさん。
今年も、宜しくお願いします〜。
気を許すと、もう、2月。ほんとに、毎日が
飛ぶ様に過ぎていきますね。
今年も、お体に気をつけて、お互いマイペースで
参りましょうね。宜しくお願いします。

>タッチおじさん。
今年も宜しくお願いします!!
有り難うございます。

>きよたんさん。
高峰秀子さん、素敵な女優さんですね〜。
美しく聡明で、力強さがあります。
今の女優さんには、なかなか、いないタイプですね。

映画の中の情景。。。例えば、
わらじが切れてしまい裸足の子がいたり、
アルマイトのお弁当箱が買えない子がいたり、
家事育児におわれて、学校に通えない子がいたり
なんていう細かい様子がリアルだなあと、
感心して見ていました。
貧しい時代だったんですよね。それでも、皆、
なんとか生きていた。そんなやるせない様子が
しみじみと伝わり、色々と考えさせられました。
現代の子供たちにも、見てもらいたいですね〜。

>ツキヒメさん。
私も、確か、中学生時代だったと思うんですよ〜。
当時は、正直な話、印象に残っていなくて。
かわいそうに。。。という感覚もなかったんです。
貧困、戦争へのイメージが、乏しかったからだと思うんですが、
今の方が、行間に込められた願いを、強く、感じ取る事が
できたと改めて考えさせられました。

中学生の頃は、木下監督の映画版を最初に見た方が
よかったかな??見終えた後は、戦争というものを
鮮明にイメージできましたので。。。
改めて、考えさせられる事が多かったです。
名作は、やっぱり、時を超えますね〜。

by qooo (2013-02-09 06:05) 

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